ジェフティ 約束
「いや!」
 ラルフの背後でジェイの悲鳴が上がった。
 ハッと我に返り振り向くと、そこには馬上にジェイを抱え上げたアスベリアの姿があった。ジェイの暴れる腕をあっという間に押さえ込み、身動きを取れないように抱きすくめてしまう。
 アスベリアがふっと笑う。ラルフの周囲に、負傷してうずくまる自分の部下たちを見回した。
 剣の心得なんてまったくないと、見るからに分かる動きだったが、むちゃくちゃに振り回したわりに、これは損害が大きすぎる。ラルフが握る見覚えのある剣に目をやり、アスベリアはラルフと重なる面影を思った。
「ノリスの甥か。まったくやってくれたもんだ」
 アスベリアの苦笑は、やがて嬉しそうな笑みに変わった。
 ――私の故郷には、とてもかわいい甥がいてな!
 破顔しながらそうノリスが話すたびに、周囲は「お前が父親みたいだな」と半ば呆れ顔で何度も同じ話しを聞かされた。
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