ジェフティ 約束
 手の中には、血まみれの剣が一本。手のひらに押し付けられるその重みだけが、くっきりとはっきりと現実を見せ付ける。

 ――ああ……。
 と、声にならぬ言葉だけが、喉から空気となってもれ出た。一体何を表した音であったのか、自分でも分からない。


 今でも、これで人を切った感触が手から離れないでいる。しかし、すでに自分に切りかかってきた男の顔も思い出せなかった。
 君を守りたいと願ったのはこういうことか。強くなるとは、誰かを傷つけることなのか。
 祈りにも似た想いは、一瞬のうちに現実となって容赦なく襲い掛かる。それがいかに幼稚で浅はかな夢だったかと、愚かな自分に知らしめるために。
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