ジェフティ 約束
第1章 鎮魂の舞
■1-1 彷徨いの森
体が痺れて微塵(みじん)も動くことができなかった。どっしりと粘度の高い倦怠感(けんたいかん)が、全身にのしかかっていた。
――流されてきたんだ。
水の中で必死にもがいていたことを、ラルフは思い返している。いつしか記憶はどんどんとさかのぼり、テルテオの村の橋の袂までたどり着いた。
今年は雪解けの水が豊富で、水量が例年よりも多く、コドロー橋の下を流れる川の流れは、轟々と激しい音を立てていた。
足がもつれて、何度もつまずきそうになりながらも、ラルフは懸命に走った。背中に背負った長剣が、一歩ずつ進むたびに重さを増しているように、ずしりずしりと膝にひびく。
コドロー橋までの、ほんの数十メートルという距離が、永遠に届かないのではないかと思うほど遠く感じられた。
怖くて振り返ることができない。ラルフを追いかけてくる兵士の足音が、すぐ後ろまで迫って来ていたのは分かっていたから。
遠くから聞こえてくる悲鳴に耳を伏せながら、歯を食いしばって固く目を閉じ必死に走った。
――殺される。殺される……。
そう心の中で繰り返しながら……。
――流されてきたんだ。
水の中で必死にもがいていたことを、ラルフは思い返している。いつしか記憶はどんどんとさかのぼり、テルテオの村の橋の袂までたどり着いた。
今年は雪解けの水が豊富で、水量が例年よりも多く、コドロー橋の下を流れる川の流れは、轟々と激しい音を立てていた。
足がもつれて、何度もつまずきそうになりながらも、ラルフは懸命に走った。背中に背負った長剣が、一歩ずつ進むたびに重さを増しているように、ずしりずしりと膝にひびく。
コドロー橋までの、ほんの数十メートルという距離が、永遠に届かないのではないかと思うほど遠く感じられた。
怖くて振り返ることができない。ラルフを追いかけてくる兵士の足音が、すぐ後ろまで迫って来ていたのは分かっていたから。
遠くから聞こえてくる悲鳴に耳を伏せながら、歯を食いしばって固く目を閉じ必死に走った。
――殺される。殺される……。
そう心の中で繰り返しながら……。