ジェフティ 約束
 ふと傍らに、何か固いものが寄り添うように横たわっているのを感じた。
 力の入らない重たい腕を何とか持ち上げて、指先をそれに這わせてみる。
 長くて、中心に少しふくらみがあり、表面には柔らかな感触のなめし皮の帯が巻いてある。先端は、優美で繊細な彫刻を施したシルバーの台座に、磨きぬかれた大きくてまん丸の石が取り付けてあるのだ。大きな丸い宝石の名はブルーペクトライトといい、まるで澄み渡った青空に雲を浮かべたような模様がとても美しい。
 つるりとした表面に指先を触れるだけで、そのどこまでも遠く遥か頭上の青空の色を、ラルフは脳裏に蘇らせることができた。それほど印象深い大きな宝石を冠したものは、ラルフの身の回りではあれしかない。
 ノリスから受け取った剣の柄だ。
 ラルフはその柄を握り締めてみる。指の関節が、ギシギシと音を立てるような痛みが走り、現実なのか夢なのかを体が分からせようとしているかのようだった。
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