ジェフティ 約束
 まぶたがまた再び閉じようとしている。ああ、これは夢に違いないと抗う自分がいた。
 次に目が覚めれば、自分はいつもの村にいる。婆様の作ったスープの煮える匂いに、腹がなるだろう。今日もジェイと一緒に、ミルの葉を摘みに行くんだ。
 ラルフは意識が閉じ行くのを感じ、重たい眠りについた。


 ゆっくりと夢と現実の境目が近づいてきた。少し体が軽い。ラルフは、自分の体を覆っていたものに手をかけ、頭を出そうと小さくもがいた。

「気が付いたのか」
 少しかすれた腹に響く低い声、あまり抑揚もない、しかし明らかに女の声が頭上からおりてきた。
 頭を覆っていたものがふいに取り除かれて、ラルフは「うっ」と息が詰まる。目に飛び込んできた光が瞳を刺し、その痛みに顔をしかめた。
「……あんた、…だれ?」
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