ジェフティ 約束
 そうだ……、あれは夢だったのかもしれない。そう遠くない過去、やさしい記憶に触れる指先が、もう、夢へと落ち行く記憶をそこに留めておくことはできない。


 ――いかないでくれ。
 悲しみが押し寄せる。孤独が自分自身をも内から切り崩す。

 ――俺を置いていかないで。

 一人にはなりたくない。


 自分も血を流している。背中から、頬から血が流れ出し地面に染み込んでいく。
 肩で息をしながらその呼吸を全身に感じ、耳の奥で震える鼓動に耳を澄ませた。この一瞬だけでも、この身にとどまりたいとあがく事は許されないのか。
< 9 / 529 >

この作品をシェア

pagetop