眠り姫
城の内部は脆く崩れ、イバラの編み目に瓦礫が引っかかっていました。

その中を若者は駆け抜けます。

イバラを切り裂き

瓦礫を飛び越え

コウモリの嘲笑を振り切って。

薄暗い廊下に並ぶ扉を片っ端から蹴破り、中を確認していきます。

どの部屋も豪華な家具や調度品が置いてありますが、埃をかぶり荒れ果てています。

こんなところに、姫はずっといたのか

こんな不条理を、自分は許してしまっていたのか。

父王に命じられるまでもなく、話を聞いてすぐに来るべきだった。

そう、切実に後悔しました。

「今しばしお待ちあれ。あなたの王子が助けに参ります。」

若者は、さらに走る速度を上げました。

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