眠り姫
その部屋に、姫はいました。

天蓋付きの大きなベッドで、柔らかそうな羽布団にくるまれて安らかな寝息を立てています。

しかし、そのベッドにもイバラは絡みついています。

姫をその場に押し込めるように周りを取り囲み、ツタは執拗に巻きついています。

もうほとんど切れなくなった剣でへし折ると、血のように真っ赤なバラの花びらが、ハラハラと姫の透けるように白い頬に落ちました。

聞きしに勝る美しさです。

若者は思いました。

この姫の目が見てみたい。

きっと宝石のように澄んでいるに違いない。閉じたままなど、もったいない。

若者は姫の手を取り、跪きます。

「もう安心です、我が麗しのプリンセス。その瞳を私にお見せ下さい。」

姫のまぶたが、微かに動きました。
< 5 / 6 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop