First xxx.
目黒駅に付き蒼史朗に電話を掛け迎えに呼び出す。小言を言いつつも、報酬はプレミアム・モルツでとちゃっかりと言うやつにはいはいと呆れた口調で言いながら電源を切る。浪人生の分際で、しかも未成年のくせになにさと思いつつも、学生時代にフライングして飲んでいた事を考えると強く叱れない。
駅を出て待ち合わせ場所の
に入る。雑誌コーナーをみるとがフライング発売されていた。
「お、瑠美ちゃんじゃん」
ムカつくその声と口調。
振り替えると吉澤良輔が黒のジャージに身を包み笑顔で駆け寄る。
「なによ、その馴れ馴れしい感じ。やめてくれる?」
大体なんでジャージなのと思いながら顔をしかめ、ほろよいのホワイトを手に取りかごに入れる。瑠美ちゃんそんな弱いのでいいの?と茶化しながら指差す。コンビニだから仕方ないじゃん、お酒の種類少ないんだからと思いながらシカトする。
シカト酷いとかぶつぶつあたしに文句を言うやつに「だから、馴れ馴れしいのよ」と言いエビスのロング缶を2本追加していれる。ついでに薩摩白波も追加だ。
「いいじゃんっ、俺と瑠美ちゃんの仲……じゃん?」と言い意味ありげに勝ち誇ったような顔をして笑う。その顔に余計に苛立つ。
「一晩過ごしたじゃん?ラブホ泊まったじゃん」と言いあたしの跡をつけるように後ろを歩く。周りの客の目線が痛い。これじゃああたしがこの男をたぶらかせた悪女じゃん。この男をヤり捨てた尻軽女って思われそうだ。これが近場のコンビニじゃなくて良かったと心底思う。
たださ、悪酔いしたあたしを介抱してくれただけ。たぶんなんもなかったし。覚えてないけど。なにもなかったと言う確証はゼロだ。
だけど、アホみたいににやっと笑うやつを見るとそこまで人として腐っているように見えないし、悪いやつじゃないと思う。
「もう、忘れられない夜だったよ。いろんな意味で……」
前言撤回だ。その言葉にムカついて普段はあまり飲まない富士山麓とダニエルジャックにソーダ水を追加してレジに向かう。
「はーい、もしもーし」
『ねーちゃん着いた。今日はボルボ』
「うん、分かった。買ったら行くねぇ」
『その口調やめろ。キメェって』と言う蒼史郎を無視して通話をオフにする。
「瑠美ちゃん、誰?」
「男だよ、男」
弟だけど、男には変わりない。彼氏なの?とかセカンドくん?とか質問責めを無視して会計を済ませ、なおも犬みたいに喚くやつをシカトしながらコンビニを出る。しばらくはこのコンビニには来ないだろう。いや、もう来れないかもしれない。
ハザードをたいて路肩に停まる少しゴツいシルバーのセダン。窓を軽く叩き、開けてーと彼女っぽいノリで言う。蒼史郎は怪訝そうな顔をしながらもドアのロックを解除する。
「瑠美ちゃん!」
うるさいハチ公だこと。
瑠美ちゃんのアッシーくん、ボルボなんだね。
瑠美ちゃんって車で男判断する系?
ディスプレイに映されたその文面に、思わずスマホをぶん投げたくなる。しかも今どきアッシーだかネッシーだかレッシーなんて使わないよ。
マジムカつく。大ッ嫌いだあんなやつ。