First xxx.
「シャワー浴びるってゆーか、風呂入る?」
そう訊かれ頷くと「だろうと思って溜めといたよ。ボタン押せば泡が復活するから」
大理石を使って調にしたお風呂。家のお風呂よりでかいわと思いながら鍵をかけようとするがかからない。これが噂の鍵なし扉か、欠陥住宅ならぬ欠陥ホテルじゃないかと思いながらドア越しに開けないでねと叫ぶと、開けないよと返ってきた。
洗面台に置かれた袋に入ったヘアゴムを取り、前髪を纏める。帰ったら念入りに美顔器を使わなきゃなと思いながらカラフルなボトルからクレンジングと書かれたボトルをプッシュする。甘ったるくて安っぽい香りに顔をしかめながらもまずは化粧を落とさなければならない。ファンデーションが崩れすぎて悲惨なうえにエクステが若干歪んでる。着けたばかりだからお直しはただだけどなんか悲しい。
それにしてもテクスチャーが悪い。
「ここって、アメニティブランドのじゃないの?」
「ブランドって?」
「ロクシタンとかかな?うちの会社シティホテルとかにアメニティ置いてあるのに、ここは全く知らない会社なの。どこの傘下か分からないしなにこのテクスチャーと匂いサイアク」
そう真顔で言いクレンジング伸びが悪いと手の甲に付けると良輔くんはぷっと笑う。
「やー、こうゆうとこはあんまいいの無いよ。場所によってはちゃんとしたもの扱ってるけどさ。つか、瑠美ちゃんラブホ入ったことないのっ!?」
「う、うん」
そりゃないよ、彼氏いたこてないし。それに、友達と都内でお泊まり会しても、の女子会プラン使うし。てか、同性じゃ入りづらいじゃない。
「瑠美ちゃん。瑠美ちゃんの元カレ達みたいにいいホテルに泊める男は少ないから。頑張っても私鉄のホテルくらいだから。もっと世間知ろうね」
そう言って頭をポンっとされる。
バレてない?けど、絶対に勘違いされている。
律子さんの言う通りお嬢さんだなと言いながらに置かれたバインダーを取り、ページを捲りながらフロントに内線をかける。
「なにしたの?」
「シャンプーもクレンジングと同じ匂いだから、フロントに頼んだんだよ。あとはコテも頼んだよ」
「ありがと」
気が利くなと思う反面、その手慣れたような態度に少しだけもやっとした。
たぶん、彼はあたしより手慣れている。イケメンだから彼女の二人や三人はいてきっと女には困ったことはないだろう。それに広告代理店勤務なら女なんか引く手あまただろうし。てゆーか、世の中の大半はこんなことに手慣れているんだ。なんか、少し悲しくなると同時に虚しくなる。