First xxx.
second

ムカつくやつ

 
 9月も終わり頃になると寒暖の差が激しくなる。日中は夏本番並みに汗ばむと思っていたのに、日が落ちると少し肌寒い。

 「最近、寒くなったね」
 仕事終わりの。会社から駅に続く道を歩きながら佳奈子が腕をさする。
 「ね。寒暖の差が激しすぎ。肌も荒れてくるけど服も何着るか困るよね」と、雑談しながら駅に向かう人の波に乗る。

 佳奈子とはあの飲み会以来よく会うようになった。会社が近いのもあってお互い仕事が同じ時間帯に終われば一緒にご飯を食べたりしている。前まではそこまで仲良くなかったのに、ふとしたきっかけで人の仲は浅くもなれば深くもなるから不思議だ。

 「それよりさ、良くんとはどうなったの?」とニヤニヤしながら訊く佳奈子に「あんなやつ嫌い」と言い口を尖らせる仕草をする。
 「良くんいい人じゃん。優しいし、面白いし、明るいし!」
 そう吉澤良輔を推す佳奈子に自分が付き合いなよと言うけれど、彼氏ができたから無理と言い彼とののろけ話をし始めた。彼氏もといふみくんことモトくん。あの飲み会でダントツ人気だった彼を見事に射止めた。
 元カレにこっぴどいフラれ方をしたみたいから、
 「あいつ嘘つきだもん」
 「それはさ、しかたないよ。来るはずの先輩に彼女いてしかも。みんな」
 「」
 「でも……ほんと良くんいい人みたいよ?ふみくん言ってたもん」と、彼氏も絶賛していた事を言う。確かモトくんと学生時代の友達って言っていたっけ。でも、

 本当にムカつく。なにさ、自分だってアメカジで格好派手なくせに。おまけに嘘つきで本当はフリーターだったくせに。不覚にもカッコいいと思った自分がバカみたいだ。思い出しただけで腹が立つ。
< 9 / 11 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop