夏雲
 彼の言葉の通り、彼がアタシにしたことは気持ちよくなかったわけじゃなかった。
「でも、ただはじめての子っていうのとも君は違う感じがした。
 君さ、たぶんあの三人組に脅されて、こういうことしてるんだよな。一万五千円を五千円札三枚でほしいなんてフツー言わないもんな。あの三人が分けるんだよな。君の取り分はなしか」
 彼の指がアタシのあそこの、アタシもまだ知らなかったような場所をこすったとき、yoshiとのエッチでは感じたことがなかったような快感がアタシを支配した。
 yoshiとするときには透明なものしか出ない愛液が、彼の指のせいで、白くネバネバしたものに変わっていた。
 彼はアタシの愛液で汚れた指をアタシの口に入れて舐めてきれいにするように言った。
 そのときアタシは彼に征服されてしまったのだと思う。
 彼のペッティングやクンニだけでアタシは何度も、はじめてイクっていうのを知った。
「処女じゃなかったみたいだし、彼氏いるんだろ。
 どういう理由があってさせられてるのか知らないけど、やめたほうがいいよ。
 君にはこういうのは向いてないと思うな。
 彼氏が知ったら、俺と同じで女が信用できなくなるかもしれない。俺は自分を不幸だとは思わないけれど、他人から見たらたぶん不幸なんだよな。
 そういうヤツが増えるのはやっぱり不幸なことだと思うから、君はもう今日のことは忘れて、二度とこんなことはしないほうがいいよ」
 彼にされてるとき、される前に思っていたほど、あまり嫌だと感じなかった。
 気持ち良かったんだ。
 もっともっとしてほしいって思ってた。
 だけど彼がアタシの中で果てて動かなくなったとき、アタシはやっぱりyoshiがいいと思った。
 彼はワイシャツを着て、スボンを履き、ジャケットをはおると、ネクタイを締めながらアタシにそう言った。
「もう七時みたいだね。
 俺、そろそろ次の取引先に顔出さないといけないから、先に出るよ。
 前払いでお金は払ってるし、ここ、八時までいていいみたいだから。ゆっくりしていくといいよ。我慢しなくていいからさ、泣きたいなら泣きたいだけ泣きなよ」
 彼はアタシにとてもやさしくしてくれた。
「ケータイ」
 アタシは、小さく呟いた。
「え?」
「ケータイ、取って。アタシの鞄の中に入ってるから」
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