夏雲
「手錠って見たことあるか?」
 ふたりめのお客さんは、刑事だった。
 三十代後半の男の人だった。
「ビレッジバンガードに売ってるのなら」
 アタシがそう答えると、彼は背広から手錠を取り出した。
 黒くて、重たそうな手錠だった。
「ああいうおもちゃの手錠は銀色だろ」
 アタシはうんとうなづいて、
「本物は黒いんだね」
 そう言うと、彼は満足そうに笑った。
 すると今度は警察手帳を見せてくれた。
「テレビの刑事が持ってるのより大きいだろ」
 自慢げに彼はそう言った。
 表紙をめくると、彼の顔写真があり、彼は安田という名前で、役職は警部補だとわかった。
「刑事さん」
 と、アタシは安田のことを呼んだ。
「刑事さんがこんなことしていいの?」
 そう尋ねると、
「刑事だって同じ人間だよ」
 そう言った。
「拳銃が撃ちたいっていうだけの理由で刑事になるやつだっているし、十年くらい前に児童ポルノ禁止法って法律が出来てから、十八歳未満の女の子の裸の写真とかビデオとか持ってるだけで捕まるようになっただろ。セックスしても捕まるし。
 そういうのを扱ってるビデオ業者を警察が摘発してビデオを押収したってニュース、一度くらい見たことあるよな。
 押収したビデオがそれからどうなるか知ってるか?
 署内でロリコンのやつらが回し見したりしてるんだぜ」
 刑事なんてそんなもんだよ、と安田は言った。
 そして安田はアタシに後ろ手に手錠をかけた。
「本物の手錠でソフトSMを楽しんだりする刑事もいるってわけだ」
 彼はそう言って、アタシを犯した。
 セーラー服を着たままで手錠をかけられているだけで、アタシは興奮して、それ以外に何もされてないのにあそこはベタベタで、はじめて見るくらい大きな安田のペニスがするりと入った。

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