夏雲
 安田はアタシのお腹に精液をたっぷりかけると、手錠をはずしてくれた。
「シャワー、浴びてきなよ」
「ね、今度パトカー乗せてよ」
 アタシがそう言うと、いいよと彼は笑った。



 安田はアタシに五千円札を三枚をくれたあとで、
「一万五千円って話だったけど、手錠でソフトSMっていうのはやっぱり追加料金が発生するよな」
 そう言って一万円札をくれた。
「こんなにいいの?」
 いい、と彼は言った。
 アタシは五千円札をセーラー服の胸のポケットに、その一万円札を美嘉たちに見付からないように、靴下の中に隠した。
 安田はそんなアタシを不思議そうに見ていた。
「どうしてアタシがウリなんてしてるか聞かないの?」
 アタシが尋ねると、
「聞いてほしいのか」
 と逆に聞かれてしまった。
「やらされてるんだ、友達に」
 アタシは言った。
「アタシが体を売って稼いだお金は全部巻き上げられるんだ」
 安田は「そうか」とだけ言った。
「そんなやつらは友達じゃあないよな」
「でも、アタシがやめるって言ったら、たぶん美嘉たちはyoshiにアタシがウリをしてること話すし、アタシの代わりに今度は凛がウリをさせられちゃうだろうから」
「yoshiっていうのは彼氏か」
 アタシは、うん、とうなづいた。
「凛って子はお前の大事な友達なんだな」
 アタシはもう一度うなづいた。
 安田はアタシに名刺を差し出した。
「耐えられなくなったら俺を訪ねてこい。その連中、捕まえてやるよ」
 そう言った。
「いいの? 刑事さんがアタシを買ったことまでバレちゃうよ」
「別に構いやしないさ」

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