夏雲
第六話
 午後三時二四分、アタシのケータイがラブスカイウォーカーズの新曲を奏でた。
 夏休みに入ってから、毎日お昼を過ぎた頃に美嘉からメールが届くようになった。
 美嘉がツーショットダイヤルで見つけたお客さんの特徴だとか待ち合わせ場所だとかがメールには書かれていて、お客さんがどのコースをお望みなのかも書かれていた。
「美嘉ちゃんから?」
 凛がアタシに聞く。
「うん。ゴムありで、オプションにフェラチオだって。手に吐き出せばいいみたい」
 アタシは美嘉のメールを読み上げた。
 今日のお客さんはAVみたいなセックスがお好みらしい。
 この数日、毎日のようにAVみたいなセックスばかりさせられていた。
 男の人はきっとみんな、AVが大好きなんだ。



 今日は凛とまた秋葉原に出掛けていた。
 待ち合わせ時刻は十時四五分。
 待ち合わせ場所は秋葉原駅の改札口。
 秋葉原にアリスカフェという、不思議の国のアリスの世界を再現したカフェがあるらしく、凛が一度そのカフェに行ってみたいと言ったのは昨日のことだった。
 どうやら人気店らしくなかなか入れないこともあるらしいということで、開店時間より少し早く待ち合わせをすることにした。
 横浜駅の四番線から京浜東北線に乗ると乗り換え無しで秋葉原駅に着く。この間ツムギが教えてくれた。
 運賃は片道五四〇円。
 時間は快速なら四〇分、普通だと四三分位で、あんまり変わらない。
 この間は横浜駅から京浜急行で品川駅まで行って、そこで京浜東北線に乗り換えた。片道四五〇円だった。
 京浜急行で快速特急に乗れれば四〇分ぐらいで着くけれど、乗り換えが一回あるのでちょっと面倒だ。
 九十円しか違わないなら、アタシは乗り換えなしの方がいい。
 四十分過ぎ、京浜東北線の電車を降りたアタシは改札口で、凛を探したけれど見当たらなかった。
 まだ来てないのかな、伝言板のそばに立ち辺りを見回しながら着いた旨をメールで連絡すると、

>ごめんなさい
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