夏雲
けれど、彼は中学二年から美嘉のことが好きだと言っていたし、美嘉には噂になっていた男の子がいたから告白ができなかったと言っていた。
自分の気持ちをどう抑えたらいいのかわからなくてそんなことをしてしまったのかもしれないなと思った。
中学生の男の子は大変だ。
だけど、いくら好きだからと言ってもしてはいけないこととしていいことがある。
「あいつ、電話であたしに何て言ったと思う?」
美嘉の問いにアタシは答えることができなかった。
「やっと繋がることができたね、ってあいつそう言ったの。気持ち悪くてすぐ電話を切って着信拒否したんだけど。今度は非通知でかけてきて、その次は家の電話から。最後には公衆電話からかけてきて。今度こそ繋がってくれるよねって」
美嘉は非通知の電話も、ナナセの家の電話も、公衆電話もすべて着信拒否したそうだ。
その後で事件のことを思い出して、一晩中トイレで吐いたと美嘉は言った。
「友達のケータイの番号、勝手に他人に教えるなんてことフツーはしないよね。あんたにはちょっと罰ゲームをしてもらおうと思うんだ」
美嘉は屋上のフェンスにアタシを追い詰めて言った。
「罰ゲーム?」
アタシが尋ねると、美嘉はまた作り笑いでアタシに笑いかけた。
「そう。罰ゲームって言ってもそんな大したことないけど。あたしと麻衣の仲だもんね。あたしの言うことをしばらくの間聞いてくれたら許してあげるから」
罰ゲームについては後から詳しく教える、美嘉はそう言うと、踵を返して階段を降りていった。
アタシはしばらくの間、その場で呆然と立ち尽くしていた。
一限目の始業ベルが鳴るのを聞いて、アタシは教室に戻った。
美嘉はその日一日中、ケータイをいじっていた。
授業時間も休み時間もずっと。
休み時間になると、廊下で誰かと電話をしているようだった。
きっとアタシへの罰ゲームに何か関係があるのだ、とアタシは思った。
「どうしたの? あんまり元気ないみたいだけど」
不安そうにしていたアタシに、yoshiが声をかけてきた。
アタシは何でもないよと笑った。
うまく笑えていたかどうかわからなかったけれど、yoshiはそう、とだけ言って、席に戻って行った。
自分の気持ちをどう抑えたらいいのかわからなくてそんなことをしてしまったのかもしれないなと思った。
中学生の男の子は大変だ。
だけど、いくら好きだからと言ってもしてはいけないこととしていいことがある。
「あいつ、電話であたしに何て言ったと思う?」
美嘉の問いにアタシは答えることができなかった。
「やっと繋がることができたね、ってあいつそう言ったの。気持ち悪くてすぐ電話を切って着信拒否したんだけど。今度は非通知でかけてきて、その次は家の電話から。最後には公衆電話からかけてきて。今度こそ繋がってくれるよねって」
美嘉は非通知の電話も、ナナセの家の電話も、公衆電話もすべて着信拒否したそうだ。
その後で事件のことを思い出して、一晩中トイレで吐いたと美嘉は言った。
「友達のケータイの番号、勝手に他人に教えるなんてことフツーはしないよね。あんたにはちょっと罰ゲームをしてもらおうと思うんだ」
美嘉は屋上のフェンスにアタシを追い詰めて言った。
「罰ゲーム?」
アタシが尋ねると、美嘉はまた作り笑いでアタシに笑いかけた。
「そう。罰ゲームって言ってもそんな大したことないけど。あたしと麻衣の仲だもんね。あたしの言うことをしばらくの間聞いてくれたら許してあげるから」
罰ゲームについては後から詳しく教える、美嘉はそう言うと、踵を返して階段を降りていった。
アタシはしばらくの間、その場で呆然と立ち尽くしていた。
一限目の始業ベルが鳴るのを聞いて、アタシは教室に戻った。
美嘉はその日一日中、ケータイをいじっていた。
授業時間も休み時間もずっと。
休み時間になると、廊下で誰かと電話をしているようだった。
きっとアタシへの罰ゲームに何か関係があるのだ、とアタシは思った。
「どうしたの? あんまり元気ないみたいだけど」
不安そうにしていたアタシに、yoshiが声をかけてきた。
アタシは何でもないよと笑った。
うまく笑えていたかどうかわからなかったけれど、yoshiはそう、とだけ言って、席に戻って行った。