もう恋なんてしない
僕を見た瞬間
怯えていた彼女の表情が安堵のものへと変わる。

良かった――
間に合ったんだ。


とにかく必死だった。
無意識に二人を殴っていた。

後ろから瑠璃ちゃんに腕を引かれ、自分の仕出かした現実を知る。


火事場の馬鹿力?
いや、これはちょっと違うか・・・。


ふと見れば、道端に倒れこむ二人の男。
完全に意識を失くすまで、夢中で殴りつけていたらしい。


殴る手を止めた僕に、瑠璃ちゃんが抱きついてきた。


よっぽど怖かったんだろう。


震える身体。
迷わずギュッと抱き寄せると、僕の腕の中にすっぽりと収まる。

「間に合って…良かった。
怖い思いをさせて…ごめん」

瑠璃ちゃんは泣きながら、必死に首を横に振っていた。

「流星さんに黙って…お店を出た、私が…悪いんです」

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