もう恋なんてしない
家元は緋笙流の今後について、懇々と話し出した。


後継者がいない――

それは緋笙流にとっては、致命傷だった。


家元には息子が一人きり。その息子の失踪。
“そろそろ隠居生活を…”と目論んでいた家元は、大幅な軌道修正に大弱り。

急遽、白羽の矢が立てられた家元の甥っ子はまだ4才。
一人前になるには、まだまだ時間がかかる。

それまでの間、家元が頑張ればよいだけの話なのだが、持病を患っている事もあり、繋ぎの人材が必要と考えたらしい。

家元の名はそのままに、活動するための幹部人材を何名か置き、緋笙流の布教に努めるらしい。
人材は何人もいるけれど、特に若い人向けの指導役に私を使いたいとの事だった。
場合によっては海外進出も。
イベントでの作品が評価された、との事だった。

でも…本当はどうなんだろう?

私が断りにくい様に、あの作品を持ち出した気がしないでもない。

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