もう恋なんてしない
浴衣一式を手に取り、慌てて玄関へ走った。

「そんなに慌てなくても大丈夫ですよ。
どうせ流星はすぐに来ませんから」

そっか。
流星さんはお仕事なんだ。

促されるまま、ケンさんの車に乗る。

「本当なら…流星と一緒にお祭りに行くはずが…。
申し訳ありません」

「いえ、そんな…」

「今日だって…急なアポが入って…。
なんとか花火までには戻るって言ってました。
勝手の分からないところに瑠璃さんを閉じ込めて申し訳ないとも…」

流星さんからの伝言を淡々と伝えるケンさん。
言葉遣いも秘書のままだ。

どうしよう。
確かめようもないから…ケンさんに訊いてみようかな。

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