もう恋なんてしない
ケンさんに連れられて来たマンションはタワー型の高層マンションだった。

「ほら、あそこ。あっちにも」

カメラマンと思しき人物が隠れるように立っていた。

「大丈夫ですよ、安心して下さい。
このまま駐車場に入りますから」

はぁ。(溜息)


駐車場からエレベーターに乗り、目指すは32階。
最上階なんだ・・・。

慣れた手つきで鍵を開け、中へと進むケンさん。

「食事はケータリングでご用意しました。
一応、お食事の前に冷蔵庫の中をご確認下さい。
喉が渇いたら…冷蔵庫の中の物を適当に飲んでいて欲しいそうです。
キッチンも遠慮なくお使い下さい。

エアコンは先ほどケータリングを運んだ時にスイッチを入れましたけど…冷え具合はいかがでしょう?このリモコンでお好みになさって下さいね。

こっちはテレビのリモコン。
気兼ねなくテレビやオーディオをお使い下さいと言ってました。

あと、お手洗いはこちらです。洗面所はこっち。

他に何か、質問はありますか?」

事務的に説明するケンさんに、私はただ首を横に振った。

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