もう恋なんてしない
32階って…こんなに遠かったっけ?

エレベーターの中で、待つ事すらもどかしい。
一分でも、一秒でも・・・
早く瑠璃ちゃんに会いたいと思う。

開錠する間も待ち切れない。
この扉の向こうに…彼女がいるはずだから。

ドアを開けると
リビングからパタパタと走り寄る足音。


「おかえりなさい、流星さん!」


憧れの彼女が、今…目の前にいる。

「た、だいま…」


「お邪魔しています」

軽く頭を下げる彼女。

浴衣姿だ。
アップにされた長い髪。
覗くうなじが色っぽい…。

お祭りに連れて行ってあげられなかった不甲斐なさを感じてしまう。


それでも…

こんな僕を君は許してくれる?

< 232 / 369 >

この作品をシェア

pagetop