もう恋なんてしない
ちょっと気まずくなったような感じがしないでもない。


瑠璃ちゃんは視線を彷徨わせながら、無理に食事に意識を集中している。
「これは美味しい」とか「あっ、こっちも!」なんて具合に。

だけど・・・
うやむやには出来ないよな?
冴島優香の事だって、きちんと説明しておきたいし。


さて、どうやって切り出す?

僕は冴島優香と付き合ってなんかないし。
僕の好きな子は…今、目の前にいる君なんだ。
瑠璃ちゃんなんだよ、ってハッキリ言わないと。


「あ、あのさ・・・」


その時、遠くからドーンという音が聞こえた。


!!!


「花火!!始まったんですね!」

「あ、ああ…そうみたいだね?」

「どこだろう? あ! あっちに見える!! 綺麗・・・」

ガラス越しに見える花火を、うっとり見つめる瑠璃ちゃん。


そうだね、今は花火だ。

僕の釈明なんて、花火の後にいくらでも言えるから・・・。

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