もう恋なんてしない
「すまない、瑠璃…。
お前が華道をやってたと、前に流星に話していたんだ。
流星を…助けてやってはくれないか?」

どうしよう・・・。

確かに私は緋笙流の師範代の資格を持っては…いる。
教える立場にはあるし、大きな会場での創作経験もある。

だけど、次期家元の泰如さんがいない今。
私が“緋笙流”の人間として、立ち振る舞っても良いものなの…?
私がお花を生ける事で、緋笙流の名を汚す真似は、絶対にしてはならない。

「兄さん…今の私の立場では、緋笙流の名前を公にして良いか分かりません。
私、個人の作品でもいいの?」

「流星は別に流派に拘ってはいないと思う。
現に、事故に遭ったのは大学時代の知人で、ちっちゃなオフィスを構えているだけらしいし。
そこにはその人以外のデザイナーはいないみたいなんだ。

今から正式な手順を踏んで、どこかにアレンジの依頼をするとレセプションに間に合わない。
花材は既に手配済みだから、用意されたものでアレンジして欲しいらしいんだ。
お前ならなんとか出来ないか?
あいつを助けてやって欲しいんだ」

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