もう恋なんてしない
一方的に電源を切った事に、申し訳ない気持ちになる。


そうこうしてると、兄さんと電話が繋がったみたいで。
流星さんは、おばあちゃん家まで私を追いかけ状況説明を済ませた事などを報告している。


「瑠璃ちゃん、史也が代わって欲しいって」


うぅぅ…兄さん、怖いです。


でも、電話越しの兄さんの口調は、意外と優しくて。

「流星の言い訳を聞いてやったんだって?」

心なしか笑ってるようにも思える。

「それなら、家元のバカ息子には嫁がないよな?
分かってるとは思うけど、しっかり断るんだぞ? 
緋笙流にはギャフンと言わせなきゃな?
ギャフンだぞ、ギャフン、な?」

ギャフン?
ギャフンって…。


「ちゃんと流星を捉まえとけよ?
ま、心配しなくてもアイツがお前を手放すとは思えないけどな…」


電話の向こうで、かすかに笑う声が聞こえて。


ああ、やっぱり二人は仲良しなんだって思い当たる。



「じゃあ、行こうか」

電話を切った流星さんの一声で、再び車は走り出した。

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