貴方に愛を捧げましょう
序章


「ああ……。今宵は、本当に美しい月夜だ」


狭く暗い部屋の中。

檻に閉じ込められている彼は、憂いを含んだ瞳をゆらりと揺らした。

窓から覗く丸い月に、その綺麗な相貌を向けて。

月明かりが彼を照らし出し、はらりと散る黄金がキラキラと反射する。

数十年前から変化の無い毎日が、刻々と過ぎていく。


頑丈な檻によって捕らわれの身である、妖しくも美しい彼は。

今宵も月夜を仰ぐのみ……。





   ── 序章 ──


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