貴方に愛を捧げましょう


微かに囁かれた言葉にふと思い出す。

彼が忠告した、そして言われた通りになった。

あたしが未だに疲れているのは、彼の封印を解いたが故の事だ。

そして彼はあたしに力を貸してくれた。

……ということは。


「もしかして、封印を解いた影響?」

「──…ええ、由羅様。束の間の休息を頂いても宜しいでしょうか……」


それを聞いて思わずげんなりした。

それって、あたしに許可とる必要ある?

明らかにぐったりしてるくせに。

──…ほんと、面倒臭くて厄介な人。


「あたしが眠ってる間に休まなかったの?」

「貴女の事が心配だったのです……。私が休んでいる間に何かあったらと思うと、貴女のお姿を終始この目に映しておかずにはいられなかった……」


疲労にぶっ倒れているところ悪いんだけど、呆れてため息をつかずにはいられない。

どうしてこうも被虐的なのかしら。

あたしの事なんて放っておけばいいのに……眠ってる時なら、尚更。


瞼を上げる力も無いのか、二つの黄玉は一向に姿を見せない。

身を屈めて手触りの良いさらさらの髪に、そっと顔を埋めた。

唇の端に笑みを浮かべて静かに呟く。


「馬鹿ね、自分の身が持たなくなるまで無理するなんて。もう、ずっと寝てなさい」


すると、頭を抱えるような格好のあたしに甘えるように、擦り寄ってきた彼は。

脳に直に染み込むような声で囁く。


「貴女の腕の中であれば、安心して眠れます……」

「そう、良かったわね」


狂おしいほどの愛を、言葉で紡ぐ。


「目が醒めなければ、これは幸せな夢でしょう。貴女という枷(かせ)ならば、生涯囚われの身でも構わない……」


……今度こそ本気で呆れた。

上半身を上げて彼を見下ろす。

そんなこと言われたら、何のためにあなたを檻から出したのか分からないじゃない。


「なんてこと言うの、せっかく自由の身になったのに…──」


そこで不意に、葉玖が目を開けた。

甘くとろけてしまいそうな瞳と微笑みが、あたしを黙らせる。


「真の自由がこの身に還った今、由羅様のお傍に在る事が私の最大の望み。この様に至ったのは全て貴女のお陰」

「──…っ」

「ですから……どうか、受け入れて。私の自由と愛を、貴女に捧げましょう」


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