貴方に愛を捧げましょう
それから一ヶ月が過ぎ、二ヶ月が過ぎ…──季節は、秋から冬へと移り変わる頃。
両親が気に入ったと言って買ったこの古びた家に、当の本人達は当然、仕事と趣味に掛かりきりでほとんど帰ってくる事はなく。
一人暮し同然のあたしの生活にも、変動は無くて。
律とのやり取りは……やはり相変わらずで。
学校では飽きもせず、頻繁にあたしに構ってくる。
そして…──もう会う事もないだろうと思っていた、あの彼も。
「友達と、栗、焼いた」
その手にぞんざいに持たれた茶色の紙袋をこちらに差し出しながら、そう言ってやって来たのは……仙里だった。
その時はちょうど、学校から帰ってドアを開けようと、鍵を差し込んだところで──庭から、ふっと現れたのだ。
「……、で?」
「食べて。すっごく、美味しいよ」
「……」
無垢な藍の瞳で真っ直ぐに見つめられながら、そんな突拍子もない事を言うものだから……。
きっと彼に、不法侵入どうこうと人間の道徳を説いても無駄だろう。
そう考えるまでもなく悟ったため──取り敢えず、何も言わずに受け取っておいた。
すると仙里は他に何をするでもなく、なぜか嬉しそうにふにゃりと笑ってから、どこかへふらりと帰っていった。
掴み所のない気紛れな彼の考える事は、本当によく解らない。
……もらった焼き栗は、確かに美味しかったけど。
本格的に寒くなり始めると──頻繁に体調を崩してしまい、学校を休みがちになった。
どんなに用心をしても、毎年必ず、頻繁に風邪を引いてしまう。
寒いのは嫌いだ。自分のこの免疫力の低い弱い身体も。風邪を引くたびに、うんざりする。
病院に行かなければならない程に重症化することはないけれど、熱や咳より、頭痛が酷くて家を出る事すらままならない。
実際、学校どころではなくて……。
あと数日経てば冬休みという頃になっても、繰り返し引いてしまう風邪と相変わらずの頭痛で、学校を一週間以上休んでいた時だった。
長く続く気持ち悪さに食欲も無く、胃の中は空っぽの状態だというのに、ちょうど吐き気を催して洗面所で顔を伏せていると…──
「由羅ー、ゆーらー」
聞き覚えのある声が、あたしの名前を呼んだ。
近隣住人の事も考えず、大声で。
……近所迷惑だ。