貴方に愛を捧げましょう


──…本当に解ってくれたのだろうか。

いつの間にか眠ってしまったうちに、仙里は居なくなっていたけど……そのうち、またひょっこりと顔を出しそうで。

夢現(ゆめうつつ)の中、風邪と頭痛にたゆむ意識で──そんな事を、考えた。





こんな状態ではまともに歩けるはずもなく、再び学校を休んだ。

いい加減、ベッドでただ臥せっているのにも嫌気がさしてきたけれど。

だからといって何か食べようと努めても、その努力を胃が拒絶しては、口に入れた物を全て吐き出してしまって。

そのために勿論、薬も飲めずに風邪も治らなくて。


それから二日が経ち、三日経ち、一向に体調が良くならないまま…──学校を休んで、四日目が過ぎた。

そうして相変わらず、ベッドと洗面所を行き来する毎日で。


「──…ぅ、っぐ……、げほ…っ」


内臓がせり上がるような感覚が余りにも苦痛で、意識が朦朧としてしまう。

戻ってくるのは、飲んだ水と胃酸だけ。

胃は空っぽなのに、吐き気を催した時は……本当につらくて。

寒さに耐えかねて、身体に巻き付けるようにしてベッドから持ってきていた毛布を、洗面所に顔を伏せたまま、冷えきった手で握りしめた。


「は…っ、はぁっ……、ぅ……」


嗚咽による苦しさで滲む涙を拭いながら、ぼんやりと考える。

こんな状態、いつまで続くんだろう……。

今までで一番酷くて……手に負えない。

もう一度病院に行った方が良いのだろうけど、こんな状態では、とてもじゃないけど自分の足では辿り着けない。

ここまで症状が酷いのだから、きっと風邪をこじらせているんだろう。


「──ぃ、……たい…っ」


ズキッと刺すような痛みが頭の内側から襲って、ずるずるとその場に崩れ落ちた。

頭が割れそう…──気持ち悪い…っ。

反射的に頭を抱えながら、廊下を這うようにして二階へ戻ろうと……したけれど。

羽織っていた毛布を引き寄せてくるまり、廊下の冷たい床板に丸くなって、ぐったりと身を委ねた。


もう、動きたくない。動けない。

すごく……寒い。

目を閉じて、このまま目が醒めなければ…──体力を奪う寒さから、この身を苛む痛みから、解放されるだろうか。


痛む頭を抱え、瞼を下ろした。

意識がゆっくりと遠退いていくのを──…感じながら。


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