貴方に愛を捧げましょう


息つく暇もない貪るようなキスに、彼の本性──獣が顔を覗かせている。


「……っ、由羅様、由羅様…っ」

「っ、ぅ…──っん、んぅ……っ」


浴室の蒸気に、葉玖の放つ甘ったるい薫りが混ざり合う。

それはあたしを包み込み、噎せ返るような香りに堪らず喘いだ。


「ぁ、待っ…──、葉玖…っ」


不意に唇が離れ、けれどまともに呼吸する前に、再びそれを塞がれてしまう。

合間合間にあたしの名を紡ぎながらキスを施され、頭がくらくらした。

舌先を擽る彼の熱い舌の何とも言えない感覚に、思わず身体を震わすと、一端顔を放した彼があたしを抱えたまま立ち上がる。

寒さに身体を震わせたと思ったのか、単に用心しての事なのか。

あたしを温める際に濡れそぼってしまった和服をそのままに、浴槽へと足を入れる。

この後、着るものをどうするのか気にはなったが、程よい熱さのお湯にそんな思考も溶かされてしまう。

抱えられたままお湯に身を沈めた葉玖は、落ち着いた様子で改めてあたしを抱き締めた。


「頬に赤みがさして……手足も、その先も、随分と温かくなられたようで……」


上気した頬に彼の唇が触れ、手足の先に彼の手が確かめるように触れる。

同時に、耳元で甘く蕩けるような美声で囁かれ、また身体を震わせた。


「安心、しました……」

「っ、ん…っ」


彼の頭が傾き、あたしの肩口に顔を埋めるようにしながら、安堵の溜め息をつく。

濡れた長い黄金の髪が腕に絡み、ぼんやり眺めながらそれを心地よく感じつつ、彼の声に聞き入った。

あぁ……すごく、落ち着く。

葉玖の首に腕をまわして、力無く抱きつきながら思った。


肌を滑る、熱い掌。

温かいお湯の中で繊細な指先が、ゆっくりと、ゆっくりと、身体中を細やかに這う。

肩口に埋まる彼が、首の付け根に唇を優しく押し付ける。

そのまま唇が滑り降りて鎖骨に辿り着くと、ねっとりと窪みを舐められる感触に、反射的にきゅうっと身を縮めた。

身体の奥から、彼に導き出されるように熱が灯る。

しっとりとした唇が、時折ちゅっと音を立てて吸い付いて。

その跡を労るように熱い舌がなぞっていく。


本当に、どこまでも、あなたはあたしに優しくて。

──…優しすぎて。


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