貴方に愛を捧げましょう
迎えるは冬の嵐
──…それから四日後。
風邪を拗らせてあれだけ寝込んでいたにしては、随分早すぎるくらい順調に体調が回復していた。
もう頭もしっかりしてるし、自分の足でしっかり歩ける。
きっと甲斐甲斐しいまでに身の回りの色んな事をしてくれた彼のおかげ、なんだと思う。
それに加えて、彼の不思議な力の影響もあるかもしれない。
何をしてくれたのかは、具体的には聞いていないけれど。
「……葉玖」
「如何なさいました?」
「身体も大分楽になったし、明日から……学校に行こうと思う」
「──!」
朝、台所にある机で甘く煮たお粥をスプーンで掬ってゆっくりと食べ進めながら、ぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。
傍に立っていた彼は椅子に座るあたしの足元に跪き、こちらを健気な眼差しで見上げてくる。
「もう暫く様子を窺った方が宜しいのでは…? 食事を摂られるようになられたのも、昨日の朝からの事ですし……」
「もうすぐ冬休みなのよ、きっと一週間後には休みに入ってるわ」
「ですが…──」
「とにかく、取り敢えず行ってみる。つらければ帰ってくるから」
「──…っ、由羅様」
どうしても行かせたくないようで。
口にはしないけど、あたしの手を取って握り込む彼の手が、切々とそれを語っている。
……話を変えよう。
「それとね……あなたはもう、学校に来ない方が良いと思う」
「何故……」
あたしの意見に心当たりがあるのか、表情にさして変わりはない。
あたしを行かせないようにする、正当な理由でも考えているのかな……。
「律以外の、あなたの姿が視える人と……ちょっと、知り合いになってしまったから」
「霧島棗、という女性の方でしょうか」
「知ってるの?」
まさか名前が出てくるとは思ってなかった。
驚いて目を丸くしていると、その理由が告げられる。
「随分と頻繁にこちらを見られるものですから、彼女の名を誰かが呼んでいた際に覚えていたのです」
「そう……」
そういえば、あたし達の事が気になってたって、あの子言ってたっけ。
……でも、それだけじゃなくて。
「その子の事だけじゃなくてね……あなたと律、すごく仲悪いから」
最後に会った時の二人、ものすごく険悪だったし。