貴方に愛を捧げましょう

降り積もる帰心



──翌日。

葉玖に宣言しておいた通り、学校へ行くことにしたあたしは今この瞬間、学校へ向かって歩いている。


「──……」

「……」


……でも、葉玖と一緒ではない。


「……」

「……」

「……」

「──…もう、この辺で良いよ。無理してあたしについてこなくても」

「いいえ、何と言われようと付かせて頂きます。威千様の願いであり、葉玖様の大切な御方で御座いますゆえ……御二人に背く事は致しません」

「……、そう……」


相手の方に顔を向けずに話した彼女は──昨日、葉玖のお兄さんと伴にやって来た刹という子。

葉玖は……彼の兄とうちにいる。学校へ行くためのくだりには色々と……本当に色々とあった。





──今朝、目が覚めた時点で遅刻は決定だった。

傍には葉玖がいたけど、別に責める気はない。昨日あたしが学校へ行くと言った時の彼の反応には、どう見ても同意を得られたような反応はなかったし。

あたしを暖めるように寄り添ってくれていた葉玖の腕から抜けてベッドから降り、ハンガーにかけてフックに引っ掛けていた制服を手に取った次の瞬間には……予想通り、彼に止められる。


「本当に行かれるのですか…?」

「学校? 行くわよ、昨日言ったじゃない」


制服を持つあたしの手を握り込む彼を見上げて言うと、もう一方の手が頬に当てられ熱っぽい眼差しを注がれる。


「……やめて、あたしを留年させたいの?」


強引に彼との視線を切って、握られた手をほどく。

この部屋はまだ暖かい。お陰で寒さに震えずに服を着替えられる。


「ご無理なさらないよう……」

「平気よ」


きっとあなたも分かっていて言ってるんでしょうけど。でも、本当に身体が楽になっている。

黒のタートルネックを着て、その上からセーラー服を被った。スカートの下にはタイツを履いているから……多分、大丈夫。

とにかくあの冬のツンと刺すような感覚が堪らなく苦手だ。マフラーもしていこう。


「何か食されていかれるのでしょう…?」

「……何か食べないと行かせないつもりね」


葉玖は何も答えない。でも表情に出ている、考えている事。

そっと溜め息をつき、仕方なく何を食べようかと思いながら部屋を出ようと襖を開けて廊下に出た…──その時。


「──いけません威千様っ、どうかこの様な事はおやめ下さ……っ」

「その様に我を拒絶する口は、塞いでやらねばな…?」

「ぁ……!」

「……っ」


──ちょっと。


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