貴方に愛を捧げましょう
この学校には、引っ越しをすると聞いてから二日後に来て以来だったから、職員室への道のりはすんなりとはいかなかった。
それでも、うろ覚えながらも職員室に辿り着くことはできて、担任だと聞いていた教師があたしを出迎えてくれた。
道を間違えて遅くなったと言ったら、遅刻した事について何も言われることはなかった。
髪の合間から覗く耳に付いてるピアスを見て、あからさまに眉をひそめていたけど。
そのあとすぐ、担任に案内されて今日からあたしが入る教室へ。
あたしもかなり無愛想だけど、中年の男の担任も同じくらい無愛想らしく、廊下を歩く間お互い一言も話すことはなかった。
そして教室に着き、担任に軽く紹介される。
「今日からこのクラスに入る、望月由羅さんです」
教室にいる皆はあたしを見て眉をひそめ、しきりにヒソヒソと何かを話し合っていた。
ほとんど内容が分かるほど聞こえていて、それらは全部、あたしの外見について言っている。
「すげー、ピアスの数」
「何あれ、ちょっと怖いんだけど」
「美人なのにもったいなーい」
あぁ……うるさい。
頭が痛くなる、静かにしてよ。
耳に否応なく入ってくる騒音に目をすがめながら、すぐ横にいる担任を見上げた。
どこかやる気の無さそうな彼は、あたしの視線に気付いてこっちを向く。
「先生、あたしの席どこですか」
「窓際の後ろから三番目だ。それじゃあ……すぐに一時間目の授業の先生が来るから、教室から出ないように」
そう言い残して出ていく担任に、あたしは早々と背を向けて席に向かった。
こちらを見る人達の視線を感じながら。
この中途半端な時期に転校生が来るのが、そんなに珍しい?
……って言うよりは、あたしの自身が気になってるみたいだけど。
そんなことより、とにかく静かにしてほしい。
ここは小学校じゃないんだから、もっと大人しくできないの?
そう思いながら席に着き、じっと窓の外を眺めた。