貴方に愛を捧げましょう
──それから土日を挟んで四日が経ち、冬休み前日。
「提出物、全部仕上げて提出したんだって? すげーな」
担任が冬休みに向けて必要なプリントを配るっている最中、比較的席の近い律がわざわざこっちに来てそう言った。
来なくていいのに。
「……おかげさまで」
「いや、俺なんもしてねーし」
「うん、そうだった」
「そこで納得すんなよ!せめて少しはお世辞でも言うとかさぁ……」
律が呆れた様子で頭を無造作に掻き乱しながらそう言う後ろで、先生がちらっとこっちを見た気がした。
このクラスの担任が何も言わない、最低限以上の干渉は滅多にしてこないからって、律は声が大きすぎる。
「あなたが何もしてないって言ったんでしょ」
「まぁ、そうだけどよ」
そして当の本人は対して気にしていない。全く。
他にも誰かと話している人達がいるからだろうけど。
そこで突然、律が神妙な面持ちであたしの机に手をつき声を低くして話しかけてきた。
「なぁ由羅、もし休みの間に……あいつと何かあったら、言えよ」
あいつって……葉玖のこと?
律を見上げる直前、反射的に彼がいるだろう方向に視線を向けて問い掛けた。
「当たり前だろ」
「……何もないわよ」
……多分。と、心の中で付け足す。
彼の里へ行くことになっていることは、絶対に律には言わない方がいい。
「だから、何かあったらって──」
「分かったから、何度も言わないで」
律が……あたしなんかを心配してくれているのは、分かってる。
でも、大丈夫だから。
不安なことなんて何もない。その証明に、律から視線を逸らさず見つめ返した。
すると律はぱっと姿勢を正し、意地の悪そうな笑みを浮かべて──
「んじゃ、まっ、そういうことで。また来年!」
「……っ!!」
あたしの髪を片手でぐっしゃぐしゃに乱して、自分の席へと戻っていった。
律が他の子達に話しかけられて楽しそうに笑っている後ろ姿を見つめながら、上の空で乱れた髪を適当に直す。
律には、そうやって無邪気に笑っていてほしい。
……なんて、らしくないことをぼんやり思いながら。
ホームルームも終わり帰宅したあと、着替えながらふと思い出したことを葉玖に訊ねた。
「いつここを発つ予定でいるの?」
「貴女の準備が整い次第で構いません」
「そう」
いつ出発して、いつ頃戻るのか、そういう話は一切してないんだけど……どうするつもりなんだろう。
でも……そういうことなら、冬休みに出された課題を全部終わらせてしまってからにしよう。
そんなに時間かからないだろうし。
「ちなみに、いつ頃こちらに戻られますか?」
その問い掛けだと、数日泊まることが前提になってる気がするんだけど。
そう思いはしたけど、だからと言って何か問題があるわけでもないし……何も訊かないでおこう。
仮に両親が戻ってきたとしても、やはり何の問題もないだろうし。あたしが居ようと、居まいと。
でも、とりあえずは。
「……冬休み終わる前日までなら、いつでもいいよ」
そう返すと葉玖は返事をする代わりに、嬉しそうにそっと微笑んだ。