貴方に愛を捧げましょう
門を開けて初めて敷地内を目にした瞬間、あたしは小さくため息をついた。
予想はしていたものの、目の前には広い庭があった。
手入れされていないから草生え放題だし。
それに緑の葉が生い茂った大きな木が数本植わっていて、今が真っ昼間だというのに少し薄暗い。
虫がいそうだけど、あたしはあまり気にならない。
怖がりの人が見たらお化けが出そうって言うかも。
あたしは霊感のような類いのものは一切無いし、特になんとも思わないけど。
玄関前に着いて、あらかじめもらっていた鍵を鍵穴に差し込む。
ガラガラと音をたてて引き戸を開ければ、中から漂ってきた古い木の匂いが、ふわりと鼻腔を掠めた。
大丈夫、この匂いは嫌じゃない。
靴を脱ぎ、まず先に床を見る。
中は掃除したのかな、ホコリは無いように見える。
顔を上げて、ゆっくりと周りを見渡した。
……広い、ただその一言に尽きる。
見た感じ、部屋がたくさんありそう。
関心がなかったから両親にこの家について何も聞かなかったけど、古い事の他に、この家に決めた理由がもう一つ分かった。
今まで集めてきた骨董品を置く場所には、当分困らない。
あの二人の思考は、どこまでも古いものに埋め尽くされているらしい。
きっと一生、理解できないし、するつもりもないけど。
あたしはその無駄にだだっ広い家を、探索することにした。
とりあえず手当たり次第に襖という襖を開いてみた。
思った通り、大小様々な部屋が十といくつかあった。
そうして一階をぐるりと一周し、次にその途中で見つけた階段を上っていく。
二階に着くと、最初に目についた窓を開け放った。
こもった空気が外に出て、新鮮な空気があたしの髪をなびかせていく。
この家以上に高い建物が周りに無いから、景色はそれなりに良い。
決めた、二階で自室にできそうな部屋を探そう。