貴方に愛を捧げましょう


一階同様、二階も全て探索した。

部屋数と広さは、一階より二階が一回り小さいくらい。

その中の部屋の一つに、あたしは手に持っていた荷物を置いてきた。

窓からの眺めが良くて、広さ的にもちょうど良い部屋に。


……そんなことよりも。

あたしは今、不思議な壁の前に立っている。

不思議というのも、濃茶であるはずの壁色が、途中で明らかに違う色に変わっている部分があるから。

壁よりほんの少し明るい茶色で、ちょうど大人が一人分くらいの大きさ。

しかも色違いになっている壁の境目に、僅かに隙間がある。

扉かと思ったけど、手を引っ掛ける所がない。

窪みでもあればいいんだけど……。


でも、これって……もしかして、隠し扉か何か?

建てられてどのくらい経つのかしらないけど、古いし、そういう“からくり”があってもおかしくないかも。

古いものに興味は無いけど、仕掛けや謎解きは好きだ。


あたしはしばらく、じっとそこを見つめていた。

そして何気なく手を伸ばし、中央より少しずれた場所をぐっと押してみる。


「あっ……!」


ギギッ、と音をたててそれは開いた──というより、中央を軸にして壁が回転した。

すると中から、埃っぽい空気がむわっと押し寄せてくる。

思わず口を手で覆い、それが収まるのを待った。

その間に隠し扉の中を覗いてみる。


「空っぽ……」


呟いた通り、中には何も無い。けど……あれ?

今まで見た部屋は全て畳だったのに、ここだけ床が板の間になっている。

他にも、面白いからくりがあるかもしれない。

そう思い立ったが早いか、迷わずその部屋に足を踏み入れた。

目につくものといえば、薄暗い部屋に明かりをもたらしてくれる小さな窓が一つ。


お母さん達はこの部屋の事を知ってるのかな。

まぁ……何も無いから、知ったところで興味はないだろうけど。

それどころか物置部屋にしてしまうかもしれない。

せっかく隠し扉があるんだから、あたしだけの秘密の部屋にしてもいい。


どうしても一人になりたい時に居られる場所には、もってこいだ。


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