貴方に愛を捧げましょう
「まぁ、見た目は全く違ったけど」
「さっき、彼とよく似てるって言わなかった?」
「ああ、外見は違う」
どういう意味よ。
そう思っているのが顔に出ていたらしい。
あたしを見て、律は薄く笑って続きを話した。
「そいつらが放つ“気”が似てるんだよ。そいつの場合は……妖気っての?」
最後の方は葉玖に向かって問い掛けたように見えたけど、葉玖はぴくりとも動かない。
考えの読めない冷たい瞳で、じっと律を見ているだけ。
だけど律は気を悪くする様子もなく、視線をこちらに戻した。
「由羅には分かんねぇだろうけど、感じようと思わなくても分かるっつーか」
「……で? 結局、何が言いたいの」
これ以上、意味不明な事を話し続ける気なら、帰るわよ。
もちろん“あたしにとっては”だけど。
「真っ白な髪に、青い瞳…──」
「私のような者は、勿論、他にもおります。しかし、それがどうだと仰るのですか」
あたしの前では一度も見せた事の無い、慇懃無礼な態度。
葉玖の眼差しは冷酷で、表情には何の感情も無い。
人間味など一切感じられない、まさに異質な存在が、本性を現しかけている。
そんな彼に対して怯む様子も無く、律は淡々と言葉を続けた。
「そいつの名前は…──薺(なずな)」
「……それが、何だと言うのでしょう」
その声は恐ろしく低く、まるで獣の唸りのよう。
律が一体何を言いたいのか、さっぱり見当がつかない。
葉玖は怒ってるようだけど、律が言った名前を聞いて怒った訳じゃないと思う。
その前から怒ってたし。
「仲間のとこに帰れよ」
そう葉玖に言い放つ律に、無性に苛立ちを感じた。
思わず突っ掛かる。
「だから言ったでしょ。彼はあたしから離れられないんだって…──」
「封印を解けばいいだろ」
……えっ? 封印を、解く?
誰が…? どうやって……。
「何、言って……」
律の発言に言葉が詰まる。
思考の動きが鈍り、それでも言葉の意味を理解しようと、おもむろに視線をさ迷わせた。
そんなあたしに構わず、律はどんどん言葉を続けていく。
「アイツの話をした時、お前はその事について一言も触れなかったけど、封印を解く方法、聞いた事ないんだろ」
「だって……」
考えた事も……無かった。