貴方に愛を捧げましょう
「んぅ…っ、は、ぁ…──ぅ、んんっ……!」
彼の甘い花のような芳香が、あたしの内側を攻めるように、包み込むように、強烈にぶわりと薫って。
噎せかえりそうな程に鼻腔を満たす。
柔らかな唇が──呼吸を、思考を浚い奪っていく。
静寂を守るあたしの生存本能を、激しく掻き立てる。
火傷しそうなくらい熱い舌が、あたしの舌を絡めて、声と言葉を呑み込んでいく。
──…喰らい尽くされてしまいそう。
「っ、……由羅様」
時折、胸の奥深くにまでジンと響くような堪らなく甘い声音で、あたしの名を囁きながら。
今までに隠し溜めてきた激情を吐き出すような、口角を幾度も変えられながらの激しいキスを施される。
そこからは気遣いなど微塵も感じられない。
そして驚く事に……嫌悪感も、ない。
拘束されていた手はいつの間にかほどかれていたのに、それにさえ気付く事が出来なくて。
解放されたそれで抵抗するどころか、葉玖の胸元の着物を掴んだ。
すがるように、しがみつくように。
「──…は、っ……ぅ、んっ…!」
少し離れたと思ったら、直ぐ様、唇を塞ぐように口付けられる。
心が苦しい、もどかしい、息が出来ない。
酸欠で朦朧とする……意識が、飛びそう。
「──…由羅様」
鼓膜を心地良く震わす低音を響かせ、獣の如く荒々しい口付けとは対称的に、下唇を優しく食まれて。
その跡を、熱い舌が感触を確かめるように、まるで味わうように、ゆったりと撫でていく。
「ん……、ふ…っ」
彼の熱が甘い痺れとなって身体中を伝い、隅々まで侵食していく。
中毒性のある危険な毒のように。
身体を、心を、その最奥まで、深く深く…──侵して。