ロ包 ロ孝 2
  ズズゥー

 彼は出来上がったその液体を、さも美味しそうに啜った。

「……コーヒーかぁいっ!」

 山路はビーカーを置いた大沢の後頭部に、思い切り突っ込みを入れている。

「いやぁ、いつ突っ込んでくれるのかわ、ワクワクして待ってたよ。ほらみ、みんなもどうぞ」

 彼はマグカップにコーヒーを作ると、それぞれに手渡した。

「いやぁ、あったかいわねぇ」

「人心地ついたっすね」

 そう言って他の5人が一息入れている間に、彼は凍り付いた物体をビニール袋に入れて湯煎している。

袋の中が溶けた透明の液体で満たされると、大沢は立ち上がった。

「んじゃ行ってき、きまぁす」

 それとこまごました器具一式を持って警備員小屋の裏側に彼が廻ると、程無くしてそこの主はうなだれた。

「センサーを入れてき、効き目が薄れる毎に再注入するようせ、セットしてきた。これで半日は夢ん中だ」

 ピッキングで小屋の扉を開け、入り口の鍵も手に入れた大沢は、得意気に胸を反らせる。

「結構なお手前ね! さすが大沢だわ?」

「ま、こんなも、もんですよ」

「コーヒーも美味しかったわ。ご馳走さま」


───────


 ほぼ山頂に有る、巨大な砂塵避けの屋根の下に開(ア)いた大きな搬入口の脇には、人用の小さな通用口が有った。

「監視カメラも無いのね」

 高性能赤外線双眼鏡で周囲を見回しても、それらしき影は見当たらないし、レーザートラップも張られてはいなかった。

「まず行ってみるわ?」

 野木村が扉まで行って鍵を開け、中の様子を窺う。

「各種センサー反応なし、行くわよ?」

「一応こいつはも、持ってこう」

 後から大沢が警備員からくすねたIDカードを持って着いてきた。

「中にもぉカメラは無いみたいだなぁ」

 山路が中の様子をスキャニングして言う。

「本当にここなのかしら」

 あまりのずさんな警備に疑問を感じつつも、彼らは斜行エレベーター脇の点検用階段を降りて行く。

それは配線のパイプや空調ダクトと共に、真っ暗な穴の奥底へと続いていた。


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