ロ包 ロ孝 2
「超素質、超素質っと。何か見当付かないか? 三郎」

「ううぅぅん。何から当たりゃいいんですか、雷児さん」

 ドームイン東京の物陰で雷児と三郎が話している。

「俺達年少組の半分は露店商かテキ屋だ。従って種々雑多な人間共を一番見聞きしているのも俺達だ」

 さっき食べていた焼き鳥のカスをほじりながら三郎は返す。

「そんな事言ってもシィーッ、シィーッ正体も解らないモンが探せるわきゃないですよ」

  バシィッ!

 雷児は突然三郎の顔を張り飛ばした。

「馬鹿野郎! お前はボスの恩に報いようとは思わないのか! ボスが居なけりゃ俺達は……」

 雷児は怒りでその後を続ける事が出来なかった。固く握り締めた拳がわなわなと震えている。

「ごめっ、雷児さん。ごめんなさい」

「今うちのファミリーがどんな状況か、お前だって解ってんだろぉがっ!」

 墨刀ファミリーのティーファミリー狩りと吸収工作に依り、一時期の半数程になってしまった彼らは、必然的に苦戦を強いられていた。

「墨刀の奴らが表だった動きをしていない以上、俺達も下手に手出しが出来ねぇ。
 頭数じゃとても太刀打ち出来ねぇし、八方塞がりの状態なんだぜ?」

 雷児は掴んでいた三郎の胸ぐらを突き放すと、ポケットに手を突っ込み足元の砂を蹴散らす。

三郎は暫く肩を落として考えていたが、漠然と考えても答えが出ないとの結論に達していた。

「雷児さん。考えたんですけど、まずボスがどんな子供だったのかを聞いた方がいいんじゃないすかね」

「そうか、そうだな。何の修練も積んでいない状態こそが、素質なんだもんな。
 有難う三郎。さっきは殴って悪かったな」

 雷児はそう言って三郎に頭を下げた。

「いや、ふざけてた俺が悪かったんですよ、雷児さん。
 ボスがどんな子供だったか解れば、それに近い人物を絞り込めますよ、きっと」

 若いマフィアはお互いを許し合い、またその絆の結び付きを強固にしていた。

 すると突然、彼らの程近くで怒声が上がった。

「何しやがる! てめえら墨刀か!」


< 105 / 258 >

この作品をシェア

pagetop