ロ包 ロ孝 2
「三郎、行くぞ!」

「はいっ」

 その声を求めて建物を回り込むと、今まさに襲われそうになっている仲間が居た。三郎は砂に足を取られ、よろけながら着いてくる。

「大丈夫か、三郎」「平気です。あいつら見た事有ります、墨刀の奴らです」

 前に三郎が因縁を付けられて、ジェイが通り掛かってコテンパンにした事があった。その時に居た奴らだというのだ。

「貴様らぁ」

 雷児は口の中で何やら呟く。

「うがっ!」「ぐぇっ!」「がほっ!」

 腹を押さえて苦悶の表情を浮かべながら転げ回る墨刀ファミリーのチンピラ達。雷児が放った【皆】は確実に墨刀一味のみぞおちを捉えていた。

「畜生。オェッ、覚えてやがれ!」

「まだ終わっちゃいねえ」

 捨て台詞を残して逃げようとした足元に雷児は横長の【南斗】を放つ。

「うわぁっ」「あたたっ」「はうっ」

 足をすくわれた奴らはもんどり打ってひっくり返った。

「ダッ」

 そして発声を伴って放たれた特大の【皆】は砂地を抉り取り、一味を覆った。

「オェッ、ゲホッ、ペッペッ。助けてくれぇぇ……」

 命からがら砂山から這い出した墨刀一味は、情けない声を上げながら、フラフラと逃げて行った。

「おお雷児! ありがてえ。俺も狩られちまうかと思ったぜ」

 彼はお好み焼き屋の『よっサン』だ。雷児は数年前、ティーに言われて暫く彼の店を手伝った事も有る。

「たく墨刀の奴ら、どっから涌いて来やがるんだ。物(ブツ)を持って無い所を見ると、ゲートから入って来てる事は確かなんだが……」

 一般の人間が往来する出入口は、ティーファミリーの人間が目を光らせている。

更に出入口のゲートには政府が管理する3D陰影探知機が有り、過去に存在したあらゆる武器のデータバンクとリンクしていて、全てを部品にばらしてあってもドーム内に武器を持ち込む事は出来ない。

実際、墨刀の連中がティーファミリーを襲った時に携えていた獲物は鉄パイプやバールのような物で、殺傷能力の高い拳銃や高電流スタンガンのような物は使用されていない。

「こりゃぜってえファミリーの中に内通者が居るんだってのよぉ。そりゃ間違いねぇだろう」


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