ロ包 ロ孝 2
 殺されない迄も、半死半生のまま病院送りにされてしまう恐れの有る中で、ティーファミリーの結束力と士気は今までに無い程下がっていた。

「ファミリー面して徒党を組んでた連中も、一皮剥けば所詮は只のゴロツキだ。
 何だかんだ言って、てめえの身が一番かわいいんだろぉよ」

 キセルで煙を燻らすと、よっサンは痰を吐き捨てた。

 カァァァッ ブェッ!

「それはよっサンもなのか?」

 雷児は睨みを利かしながら訪ねる。

「なんだと?」

「よっサンもファミリーより自分が可愛いのかって聞いたんだ」

 雷児の目を真っ直ぐに見返しながらよっサンは言う。

「よう雷児、お前馬鹿言っちゃいけねぇよ。
 俺は昔の人間だ。仁義に背く事だけは出来ねぇ」

 よっサンは拳で両肩を代わる代わるトントン叩いて続ける。

「この双肩にはなぁ、ティーさんから受けた恩義がずっしりとのし掛かってんのさ」

「その言葉を聞きたかったんだ。よっサンも俺らとおんなじだな。
 じゃあ行くぜ? 何か有ったらすぐ連絡くれよな」

 雷児がその場を去ろうとするとよっサンは、肩透かしを喰らったようによろめいた。

「おい、俺の昔話は聞かねぇのかい! ティーさんが俺に施して下さった有り難てぇ人情の話はよう!」

「悪りぃ、よっサン。俺、見廻り行かなきゃいけねぇから、また今度聞かして貰うよ!」

 雷児は逃げるようにしてその場を立ち去った。

「雷児さん、いいの? よっサン、寂しそうだったよ?」

「ああ、解ってる。でもあの話、マジで長げぇんだよ。店の手伝いしてる時に何度も聞いたんだけどさ、はっはっ」

 三郎は思った。自分が何度も同じ話を聞かされたとしたら「その話は何度も聞いたよ」で終わらせているだろうと。

今回は取り敢えず逃げて来たが、暇な時ならウンウンと頷きながら話を聞いてやるだろう雷児を想い描いて三郎は微笑んだ。すると、

「やめてくださぁぁぁい!!」

 雷児達はまた誰かが叫ぶ声を聞いた。今度の声はかなり遠くでしたようだが、しかしはっきりと2人の耳に届いたのだ。


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