ロ包 ロ孝 2
「なんだ? 随分とデケェ声がしたが……」

「雷児さん! もしかして?」

「ああ、それは俺も考えた。ボス迄とはいかねぇが、イイ線行くかも知んねぇな。よし、行ってみよう」

 雷児達に取って、ここドームイン東京は庭よりも津々浦々まで知り尽くした場所だ。声がした辺りにも見当が付いている。

2人は思い当たったその場所までひた走っていた。

「ハァッ、ハァッ。今日は何だかハァッ、走ってばっかりだなハァッ、ハァッ」

「ヒィッ、駄目です雷児さん。もう心臓が口から半分出ちゃってヒィッ……ます」

「俺ももう駄目だぁ、はぁっ、ハァッ」

 普段余り運動らしい運動をしていない若いマフィア達は、早々と音を上げていた。

「はぁっ、ハァッ……おかしいなぁ。ハァッ、ここいらだと思ったんだが……」

 雷児と三郎はキョロキョロと辺りを見回した。

「おい、ねぇちゃん!」

 三郎が近くを通りすがった女性に声を掛ける。彼女は三郎達のいかにも「ソッチの人間」然とした風貌に恐れをなし、そそくさと逃げ去った。

「チッ! なんだよ。人を見た目だけで判断しやがって!」  トゥェッ!

 三郎は悪態をついて痰を吐く。

「お前はレディの扱いが下手だなぁ、見てろ? ようようネェチャン。聞きてぇ事が有るんだけどさぁ」

 今度は雷児が代わって聞くが、あまり代わり映えはしない。

しかし。

「何ですか?」

 呼び止められた女性は立ち止まり、振り返った。

雷児は「ホラ見ろ」といった顔で三郎を見下している。

「利き手ぇは右腕でぇす。右投げ右打ちマス……いや、右打ちデース」

 その女性は日本人ではないようだ。とんちんかんな受け答えをしている。

「利き手じゃねぇよ! 聞きてぇ事が有るっつってんじゃねぇかっ!」

 雷児は英語がからっきし弱い。その女性に声を掛けてしまった自分を呪い始めていた。

「雷児さん。さすがにレディの扱いには長けてらっしゃる。正真正銘、外人のレディに振り向いて貰えるんだから……! ドヮハハハハ」

 三郎は堪え切れずにゲラゲラと、腹を抱えて笑っていた。


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