ロ包 ロ孝 2
「そのままよ? 危ないトコ助けて貰った命の変人言う」

「いや、そういう事じゃなくて、俺の身分は!」

【ジェイは泣いていたわ? きっと本当の家族の事を思い出しちゃったのね。私が元気付けてあげなきゃ】

「み・ぶん? ……ダー、みぶん最高ね! ヒューヒュー!」

 ジェイは額に片手を当て両コメカミを押さえると、椅子にもたれ掛かった。

「そら気分最高だろ! 駄目だ、こいつにゃ全然通じてねぇ」


───────


 カンの配慮も有って、すっかり涙も失せたジェイは叫んでいた。

「すげえっ! グラコロってこんなになってたんだな!」

 彼女は初めて見る景色に、珍しく興奮しているようだ。

 東京グランドコロニーと言ってもここは、東京寄りの千葉県に有る。ドームイン東京から30分程ホバークラフトに乗ると、前は巨大なテーマパークだった場所にそれは建造されていた。

 4重の壁にそれぞれ設けられたセキュリティゲートをひとつずつくぐり抜けると、やっと建物の全貌が見えてくる。それはとにかく大きいドームである。視界が悪い砂嵐の中に在る所為も相まって、建物の端は霞んで見えない。ドームイン東京が一体幾つ入るのか、見当もつかない程の大きさだ。

「でけぇドームっ! 良く潰れねぇな」

「コレ、屋根は風船よ。空気で膨らんでる。周りの壁だけ固いのよ」

 グラコロ内部に到着すると、カンはジェイとボディーガード達を引き連れてホバークラフトを降り立った。

 そして祖父の家を目指すカンは片手を高く挙げる。

「7人だから乗れないわ。アナタ達、自分でタクシー停めろ」

 彼は「解りました」と了承し、カンと同じく高々と挙手した。

とはいえ往来に車の影は全く無い。ボディーガードもカンも、先生が自分を指すのを待ち侘びる小学生のようだ。しかしそれはカン達の前にどこからともなくやって来て、停車した。

  ゥィン

「ジェイ、乗って」

「お、おお」

 スライドドアが開くと先にさっさと乗り込んだカンは、ジェイに手招きする。初めて見る無人タクシーに戸惑っている彼女は、そわそわとして落ち着かない。


< 118 / 258 >

この作品をシェア

pagetop