ロ包 ロ孝 2
「無人で大丈夫なのかぁ? 砂地は人の手を借りねぇと無理に決まってんだろう?」

『お客様、平気でございます。ドーム内に砂はございませんので』

「ジェイ、ホバークラフト降りた時から砂無かったでしょ」

「そうだったのか! てっきり地面は砂かと思ってた!」


───────


『有り難うございました。またご利用下さいませ』

 無人タクシー達はそう言うとまた何処かへ消えて行った。

「はい、ここが爺ちゃんちね」

 カンが案内したそこは、周りに有る同じような造りをした建物の倍程はあった。限られた土地の中でそれを許されるのは、特権階級の中でも更に位の有る者だけだ。

「凄げぇな、ビルじゃねぇか。何階建てなんだ? ココ」

「地上6階、地下は無いね。カンのスペースは最上階でぇす」

「!!」

 ジェイは言葉に詰まっていた。

 カンから女の子らしい部屋を見せて貰おうとは思っていたが、まさかそれがビルのワンフロアーだとは!

 想像を超えたそのスケールに、ただたじろぐばかりだった。

「さ、どぞ。上がったらええがな。お爺ちゃんに挨拶せにゃあナランけのぉ」

 カンの口を突いて出る言葉はまた、大分流暢にはなったが、どこかピントが外れている。

 しかし案内された玄関の広さと言ったら無い。外観の無機質さとは対称の豪奢な造りは、ロココ調のそれを思い起こさせる。

「お帰りなさいましな、お嬢様」

 その声に顔を向けると、メイドファッションをまとった福々しい女性が一礼した。

「ただいまダレブ。爺ちゃんはどこよ?」

「そんなん解りまへんどすわ? そちらにおわすのはお連れ様でっしゃろか」

【コイツから日本語習ってるから、カンの言葉がおかしいのか!】

 やっと謎が解けた喜びと、いかにも人の良さそうなダレブの微笑みに、ジェイはすっかり癒されていた。

「おお、カン。帰って来たのか」

 すると吹き抜けになった玄関ホールの2階から、顔中をシワだらけにして微笑んでいる老人が姿を表した。

「ボディーガードから連絡を貰ってな。なになに、客人とな?」


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