ロ包 ロ孝 2
ジェイは目線だけをカンに送り、ひそひそと囁いていた。
「……カン、さすがにマフィアはまずいんじゃないか?」
「大丈夫よ。爺ちゃん何よりも嘘が嫌いね。正直一番よ」
振り返らず肩越しに返事をすると、祖父に言った。
「この子ジェイ。私の命の変人ね!」
「おお、前に話していた方か! これはこれは良くおいで下さいました」
老紳士は皺だらけの顔を更にクシャクシャにして、腰を折って挨拶する。
「どうも、ジェイです」
赤みがかった天然パーマの頭をガシガシと掻きながら、彼女はペコリとお辞儀した。
「少々お待ち下さいよ?」
ひょこひょこと階段を降りてきたカンの祖父は、ジェイの前に来るとまた深々と頭を下げた。
「うちの孫が大変お世話になったそうで、有り難うございます。わたくしはカンの母方の祖父に当たります、陳 狼(チン・ロウ)と申します」
差し出された右手を無意識に掴み、呆気に取られたまま陳老人を見るジェイ。
「ああ、わたくしは在日3世の中国人ですので、中国語より日本語の方が達者なのです」
その言葉に納得してジェイの顔がパッと明るくなり、またすぐ曇る。
「いかがされましたかな?」
陳老人は首を傾げて優しい微笑みを向ける。
「いや俺、いえ私はここにお邪魔していい人間じゃ無いんですっ!」
ジェイは腰を90度に曲げ、そのままの姿勢で叫んでいた。
「ふむ、そう申されますと?」
カンは傍らで心配そうに見守っている。意を決して顔を上げると、ジェイは陳老人に向かって吐露した。
「私はマフィアの人間で、お尋ね者なんです。そんな人間が居たら、お爺さんにも迷惑が掛かってしまう」
陳老人は片方の眉を上げ、ジャイロステッキ※ に両手を預けると、ジェイの顔を覗き込む。
「ふむ。いい目をなさってらっしゃる……榊順子さん、ご安心下さい。ここに居れば安全です」
「さかっ……な、何で私の本名をっ? 警察だって音力だって知らない事なのに」
※ 超高速回転する円盤を内蔵し、自立して使用者を保持する杖。
「……カン、さすがにマフィアはまずいんじゃないか?」
「大丈夫よ。爺ちゃん何よりも嘘が嫌いね。正直一番よ」
振り返らず肩越しに返事をすると、祖父に言った。
「この子ジェイ。私の命の変人ね!」
「おお、前に話していた方か! これはこれは良くおいで下さいました」
老紳士は皺だらけの顔を更にクシャクシャにして、腰を折って挨拶する。
「どうも、ジェイです」
赤みがかった天然パーマの頭をガシガシと掻きながら、彼女はペコリとお辞儀した。
「少々お待ち下さいよ?」
ひょこひょこと階段を降りてきたカンの祖父は、ジェイの前に来るとまた深々と頭を下げた。
「うちの孫が大変お世話になったそうで、有り難うございます。わたくしはカンの母方の祖父に当たります、陳 狼(チン・ロウ)と申します」
差し出された右手を無意識に掴み、呆気に取られたまま陳老人を見るジェイ。
「ああ、わたくしは在日3世の中国人ですので、中国語より日本語の方が達者なのです」
その言葉に納得してジェイの顔がパッと明るくなり、またすぐ曇る。
「いかがされましたかな?」
陳老人は首を傾げて優しい微笑みを向ける。
「いや俺、いえ私はここにお邪魔していい人間じゃ無いんですっ!」
ジェイは腰を90度に曲げ、そのままの姿勢で叫んでいた。
「ふむ、そう申されますと?」
カンは傍らで心配そうに見守っている。意を決して顔を上げると、ジェイは陳老人に向かって吐露した。
「私はマフィアの人間で、お尋ね者なんです。そんな人間が居たら、お爺さんにも迷惑が掛かってしまう」
陳老人は片方の眉を上げ、ジャイロステッキ※ に両手を預けると、ジェイの顔を覗き込む。
「ふむ。いい目をなさってらっしゃる……榊順子さん、ご安心下さい。ここに居れば安全です」
「さかっ……な、何で私の本名をっ? 警察だって音力だって知らない事なのに」
※ 超高速回転する円盤を内蔵し、自立して使用者を保持する杖。