ロ包 ロ孝 2
「その仁美さんといやぁ雷児さんの一番……」

 雷児は胸元に有ったユウレイの口をその大きな手のひらで塞ぐと言う。

「解った! 解ったよユウレイ。仁美ちゃんが言うなら、それはそうなんだろう」

「へへっ」

────雷児がユウレイの言葉を遮ったのには訳が有る。土産物屋の仁美は、雷児の初恋の女性(ヒト)なのだ。それはまたの機会に語るとして────

 少ない目撃情報の中、自分からアクションを起こせない彼らはただ、またその男が現れるのを待つしかなかった。

「そう言えば、近頃ジェイさん見ねぇな。三郎、知らねぇか?」

「ああ、ボスが『ジェイには休暇を取らせた』って言ってましたよ。いいよなぁ」

「何言ってやがる! 俺達ゃあ毎日遊びみてぇなもんじゃねぇか!」

 そう言いながらも雷児は【ボスがジェイさんを抜けさせようとしてるってのは、本気だったんだ】と改めて思った。

 今迄だったらどこに行くにもティーとジェイは一緒に行動していた筈だ。

【ボス。ボスへの恩返しとジェイさんへのはなむけ、この雷児がきっと果たしてみせますから!】

 仁王立ちする雷児の目には、更なる闘志の炎が燃えていた。

「雷児さん、どうしたんすか。真っ赤な顔して、具合でも悪くなったんすか?」

 敦(アツシ)の言葉に依って現実に引き戻され、雷児は振り返る。

「そ、そうか?」

「目から火が出て鼻から煙りが立ち上って、まるで火事みたいになってましたよ。ハハハ」

「そんな風に見えたか? ああ、丁度いいや。みんなにも言っとこう」

 雷児はティーの意思と、ジェイを普通の女の子に戻す力になりたいという自らの気持ち、そして次のNo.2候補は自分である事を仲間に告げた。

「マジすか!」「こんなに嬉しいことは無いんでさ」「凄いですよ雷児さん!」「こりゃ頑張らなきゃな、雷児」

 彼らはそれをまるで自分の事のように歓び、一様に盛り上がっていた。


〇※○※○※


 数年前、ストリートチルドレンとしてその日暮らしの毎日を送っていた彼ら。仲間を病気や餓えで失った事も有る。


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