ロ包 ロ孝 2
 死んでいった者を荼毘(ダビ)に伏す度『明日は我が身』と、毎日生きる事だけに必死だった彼ら。

時には大喧嘩もしたが、身寄りの無い者同士、肩を寄せ合い生きてきた。

 そんな中、出会いは突然訪れる。

『待て』

 そう言われた雷児は、喩えようも無い耳鳴りに襲われ、思わず立ち止まった。

「な……なんだよ、オッサン」

『いい腕してるな、どこで覚えた』

 そう、その時彼はティーの財布をスリ取っていたのだ。

「な、何を言ってんだオッサン。俺に言い掛かりを付けようってか!」

 激しい耳鳴りはどうやら、ティーが喋ると起こるようだ。彼が黙っている今は痛みが嘘のように引いている。

「オッサン。何が言いたいんだか知らねぇが、おとなしくしねぇと痛い目見るぜ?」

  ピィッ!

 雷児が短く指笛を吹くと、埃っぽい路地裏のほっ建て小屋から次々と仲間が現れた。手には棒キレや錆びた包丁等が握られている。

『おいおい、穏やかじゃないな。少しお灸を据えてやらなきゃイカンかな?』

 ティーは呟いた。

  ズササッ ドンッ

「あっ」「おわっ」「わぁぁ」「いてっ」

 ティーの放った【南斗】(ナンジュ)に足を払われ、雷児の仲間達ははもんどり打って砂地に転がった。

「てめえ、何しやがった! オワァッ!」

  ドスンッ「ぐぇぇっ」

 またティーが呟くと、雷児の身体は飛ばされ、背中からイヤという程壁に叩き付けられていた。

「ぐえっ、ゲホッ。な、何だ? オッサン、音力か!?」

『はははっ、音力は良かったな。この格好がそう見えるか?』

「うわぁぁっ! 耳がっ! 頭が割れそうだっ」

 笑ったティーの声が持つ音圧に耐えられず、雷児は地面を転がり砂まみれになっている。

「ボスっ! どうしたんですかっ」

 はぐれたティーを探していたジェイが、騒ぎを聞き付けやって来て尋ねた。

「………」

「本当ですか? こいつっふてぇ野郎だっ」

「……!」

 ティーはジェイが着ているマントの首根っこを持って持ち上げた。捕まえられた猫のようになっているジェイを覗き込んでティーはまた呟いた。

「………」

「はい……解り、ましたぁ」


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