ロ包 ロ孝 2
 雷児は慌てて縄を解き、頭をガシガシと掻きながら言う。

「いや申し訳ない。でも、こうでもしなけりゃまた逃げられそうだったからな」

「危害を加えないとおっしゃるなら、もう逃げませんよぉ」

 吉村は黙ったまま口をへの字に曲げて些か不服そうだったが、田野倉は腹を決めたようだ。

「それは俺が約束するよ、こいつらも俺も一切手を出さない。
 で、何でも屋さんをやってるんじゃ、噂も方々から入ってくると思うんだが……」

 雷児は墨刀ファミリーの事、自分達の事、さっき見せた裏法の事、そして超素質を持つティーの事を話した。

「あのぉ、それが私と何か……」

「やっぱり筋者だと思っていましたよ」「この野郎! 猿は黙ってろ」「敦っちゃんこそ黙っててくれないか! その通りだよ。だがな……」

 雷児は自分達のルールを伝え、近頃では犯罪めいた物にはいっさい手を付けていない事も話した。

 チップ抜きに関してはその限りではないが、ここドームイン東京で何でも屋等を営んでいる時点で、彼らは既に施術を終えている輩だろう。

「だから皆の為にも、墨刀に縄張りを明け渡す訳にはいかないんだ」

 雷児は言い含めるように続ける。

「墨刀にはルールなんか無い。麻薬だろうが誘拐だろうが果ては殺人迄、金になる事なら何だってやる。
 そんな奴らにシマを乗っ取られたら、ドームイン東京周辺の治安は一気に悪化するのが目に見えてるだろ?」

 雷児は吉村の茶々が入らないように、言葉を慎重に選びながら言った。

「だからそれが私と、一体どんな関係が有るって言われるんですかぁ」

 田野倉は泣きそうな声を出しながら雷児に尋ねる。

「田野倉さんは、ウチのボスと同じ『超素質』を持った方だとお見受けしたんです」

 改まって雷児に言われた田野倉は、吉村と顔を見合わせる。

「でもこいつは特殊体質で、若くは見えるけどもう結構な年なんですよ?」

「だから? 何だってぇんだこの猿!」

 晋が凄んで見せる。ここで『超素質』を逃す訳にはいかないのだ。



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