ロ包 ロ孝 2
「な、何ですか貴方。脅したって駄目です、逆効果ですよ。
 それに田野倉は、記憶喪失になったお母さんの面倒も看なきゃならない。あなた方に関わっている暇なんか無いんです。なぁ?」

 吉村は大袈裟に田野倉を振り返り、同意を求めた。

「う、うん。そうだね」

 やはり頼りなげに答える田野倉。吉村の口振りから見て、どうやら彼には込み入った事情が有るようだ。すると雷児は極力ゆっくりと、吉村への腹立ちを彼らに覚られないように提案した。

「そういう事なら余計ボスに相談すればいい。ウチのボスは心の広い、いいお方なんだ。
 田野倉さんが力を貸して頂けると言うなら、俺達も及ばずながら協力するよ」

 吉村はそれを鼻で笑うと言い捨てる。

「フンッ、マフィアがいい人ですって? 笑わせないで下さい。それにならず者の貴方達にどんな協力が出来るんですか! 私達は忙しいんだ。仕事に戻りますよ?」

 ここ迄歯を喰い縛って耐えてきた敦がそれを聞いてキレた。

「なんだとぉ? 俺達の事は仕方ねぇが、ボスを悪く言う奴ぁあ許せねぇ。このクソ猿めっ……」

 雷児は、2人に掴み掛かろうとしている敦の肩に手を置き、静かに言った。

「敦っちゃん、もういいよ……。
 吉村さん、田野倉さん。お仕事の邪魔してすいませんでした。また暇が有ったらお話でもさして下さい」

「雷児さん、もういいよってそんなっ……」

 敦に皆迄言わせず雷児が顎で指し示した先には『何でも屋エンジェルス』の看板が掲げられている。

田野倉達2人は連れだってその建物に入って行った。

「ここで居を構えて商売してんだ。今日明日に何処かへ行くとも思えねぇし、ゆっくり口説けばいいじゃないか」

「こんな所に居たとは思ってもみませんでしたさぁ」

「いいか? くれぐれもヤツラに手出しは無用だぞ? 俺達は身辺調査に掛かろう」

 また円陣を組んで顔を見合わせる彼らには希望の光が射していた。

「なんだか面白くなって来たっすね!」

 彼らの『超素質』獲得作戦は今始まった。


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