ロ包 ロ孝 2
 深々と頭を下げる林に、クラッカーのリボンや紙ふぶきが降り注ぐ。

「次はコマンダーから一言お願いします」

「!」

 司会の言葉にその場の空気が一瞬で凍り付く。

「オホン! 今回の事件は我々民権奪還軍の根幹を揺るがし兼ねない出来事だったが……」


───────


「……おい。もう20分は話してるぞ」

「まだあと30分は辛抱だ」

 美味しそうに湯気を立てていた料理も冷め、勢い良く出ていたシャンパンの泡がすっかり収まった頃、清水の話は終わった。

彼らが凍り付いたのは清水に対する畏怖の所為ではなく、挨拶が長い事を知っている為だったのだ。

「じゃ、やってくれ」

「頂きまぁす!」

 漸く鎖を解き放たれた空腹絶頂の猛者達は、一斉にご馳走が並んだテーブルへと襲い掛かっていた。


〇※○※○※


「いちっ、にっ、さんっ、ふうぅ。いちっ、にっ、さんっ、ふうぅ。
 あのなぁ、ノギちゃん。もう少し離れててくれないかな」

 一心不乱にヒンドゥースクワットをする側に、野木村がうっとりした顔をして頬杖をついている。しかし林でなくとも思うだろう。「近い」と。

「あらやだ。私が傍に居ると鍛練の支障になる? ミッツィーが邪魔だって言うんなら、一子ハケまぁす」

 少し寂しそうにその場を去ろうとした野木村だったが、救護施設で久保田看護師から呼ばれていた『一子』という名は、どうやら気に入っているようだ。

「いや、邪魔と迄は言わないけど、些か近過ぎる」

 野木村は顔を輝かせて戻って来た。

「だってミッツィー。怪我する前はライオンのように雄々しく、気高かったの。
 でも退院してからは更に豹のようなしなやかさも加わって……んもう! どれだけ一子を痺れさせたら気が済むのっ?」

 ピョンピョン跳ねながら熱き思いを語る野木村。林は複雑な表情を向けている。

自分は全くのノンケだと言って居たにも関わらず、啓嗣(ヒロツグ)君を好きになっていた訳で……。

か弱い女性だと思っていた鴨下先生にもやり込められてしまった林は、ギアをどこに据えていいのか解り兼ねていたのだ。


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